ラオスUNICEF 2025年9・10月の活動レポート

レポーター

村田 千織さん
(文学部 文学科英米文学専修 4年)

活動レポート

2025年9月からラオスのUNICEF(国連児童基金)で活動中の村田さんのレポートです。

2025年9・10月

派遣先機関と役割について

2025年9月末から2026年2月にかけての約5か月間、私は東南アジア・ラオスの首都ヴィエンチャンにある国際連合児童基金(UNICEF)教育セクターで活動します。UNICEFはすべての子どもの命と権利を守るため、特に脆弱な立場に置かれた子どもたちに重点を置き、約190の国と地域で活動している国連機関です。ラオスでは1973年から長期にわたり教育、保健、栄養、保護、水と衛生などの基本的なサービスを提供し、子どもと女性の権利を促進することを目指しています。

私が所属する教育分野では、ラオス教育スポーツ省(Ministry of Education and Sports)とUNICEFが合意した2022年から2026年までの5か年教育プログラムにのっとり、政策やカリキュラム、基準の策定といったシステムの強化をおこなう上流からの取り組みと、郡・学校・コミュニティレベルでの能力開発やサービス提供、意識啓発といった下流の活動を並行し、両方の連携を強化しています。そうすることで最も支援を必要とする子どもを含め、より多くの子どもたちが入学準備を整え、学習成果とスキルを向上させ、潜在的にもつ能力を最大限に発揮できるようにすることを目指しています。わたしは教育プログラムのサポートオフィサーとして、プログラムの実施を支える文書化・調整・情報や知見の整理(ノレッジマネジメント)など幅広い分野での業務を通じ、現場の声と政策をつなぐ役割を担います。

 

1か月目のボランティア活動

9月から10月初めまでは、主に資料を読み込み、まずはラオスの教育の現状を把握することから始まりました。そのなかで衝撃的だったのは、学習達成度の低さです。ラオスでは就学率は改善してきたものの、初等教育段階における基礎的な読み書き・計算の習得が十分ではありません。例えば、東南アジア初等学習目標(SEA-PLM)2019を参照すると、読解力の最低基準を満たしているのは小学校5年生においては2.5%のみ、算数科目で最低限の習熟度に達しているのは8%のみです。
地域や言語による学習格差も大きいことは長年の課題になっているほか、コロナ禍以降にはラオス全体が経済危機に陥り、教育への国家予算の割り当ては周辺国と比べても少なく、教育の質に加え、教員不足、中退率の増加など様々な課題が山積しています。

教師研修の様子

こうした課題の中で、子どもそれぞれの学習習熟度に合わせた教育支援として、フィンランドが手掛けるAIテクノロジーを用いた算数科目のタブレット教材を試験実施するプログラムがまもなく開始されます。その開始前に教員向けの研修が開催され、私も参加しました。今回の試験対象は首都ヴィエンチャンの学校の他にも首都から離れた遠隔地の学校も含まれており、そもそもタブレットの操作自体に慣れていない場合も多く、デジタルツールへのアクセス格差を目の当たりにしました。ほかにも、小学校で習う割り算の問題に苦戦する姿もあり、教員の能力強化や働き方の改善、教育の質向上にも課題があるということを実感しました。今回の研修では1名の教員に今後の期待や現状の指導における難しさなどについてインタビューを行いました。実際に使用が始まった11月以降、再度その教員の元へ訪問し、この支援がどのように教育現場に反映されているか改めて聞き取ったうえで、記事を書く予定です。

10月20日のUNデーで同僚と

ラオスの文化に浸る

10月の初めに、首都ヴィエンチャンから高速鉄道で2時間ほどの北に位置するルアンパバーン(Luang Prabang)郡に、オークパンサー(Boun Awk Phansa・出安居)という仏教行事に合わせて訪れました。オークパンサーとは、仏僧が3か月の修行を終えることを祝う行事です。ルアンパバーンでは、町中がランタンで飾られ、ろうそくの光を灯した竹や葉で編んだ小舟をメコン川に浮かべる「Boun Lai Heua Fai(Light Boat Festival)」が行われ非常に幻想的です。川へ火舟を流すのには、煩悩や良くないエネルギーを解き放ち、人生に幸運をもたらすことを象徴していると言われています。また、巨大なドラゴンの長舟のボートレースもこの行事の見所です。タクシーの運転手によれば、これは自治体ごとの競争で、ドラゴンの大きさやデザイン、早さなど様々な評価項目があり、優勝するとその地区は日本円で5-6万円ほどの賞金をもらえるそうで、人々は一生懸命にドラゴンボートを丹精込めて作り上げるのだそうです。

ほかにも、この時期にはラオスの人たちは寺に参拝し、朝の托鉢を行います。私も朝の托鉢に参加しました。朝5時前になんとか起床し、路上でもち米(カオニャオ)とお菓子の入ったバスケットを買い、路上に用意された椅子に靴を脱いで座り僧侶たちがやってくるのをしばらく待ちます。僧侶たちがやってくると、彼らと目を合わせないように少し頭を下げながら供え物を鉢にいれていきます。驚いたのは、僧侶の方に供物としてお渡ししたカオニャオが、道の途中に置かれた容器に移されていたことです。最初はなぜそこに置くのだろうと不思議に思ったのですが、後からタクシーの運転手に伺うと、 僧侶が直接受け取る分を超えたものは、地域の中で食料を必要としている人々に分けられるためのものだと教えていただきました。このように、供物が僧侶のもとからさらに地域へと還元されていく様子に触れ、伝統的な行事からラオスの人々が大切にしている文化の一端に触れることができたのは、非常に貴重な経験でした。

ルアンパバーン、朝の托鉢の様子
ラオスの伝統衣装「シン」を着てオークパンサーへ

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