ラオスUNICEF 2025年11月の活動レポート

レポーター

村田 千織さん
(文学部 文学科英米文学専修 4年)

活動レポート

2025年9月からラオスのUNICEF(国連児童基金)で活動中の村田さんのレポートです。

2025年11月

就学前教育に関するフィールド訪問

① JICAとの連携構築に向けたフィールド訪問

10月末には、JICA・UNICEF・教育スポーツ省の三者によるパートナーシップ構築を目指し、サラワン県サラワン郡へのフィールド訪問に参加しました。ラオスのUNICEFは地方に事務所を持たないため、遠隔地の幼児教育(Early Childhood Education / ECE)の状況を継続的にフォローすることが難しいという課題があります。そこで、JICAボランティア(JOCV)との協働により、これまでアクセスが十分でなかった地域にもECE支援を広げていくことを目指しています。

ラオス、サラワン県のCBSR(Community-Based School Readiness)センターにて

この訪問では、JOCV配置の安全性・実現可能性の確認、地方政府の能力やコミットメントの把握、JICA側に対するUNICEFのECE支援の理解促進を目的に現場視察と関係者との意見交換を行いました。 初めてのラオス遠隔地でのフィールド訪問だったこともあり、ラオスの教育制度や既存の支援スキームについて、まだまだ学ばなければならない点が多くあると自分の未熟さを痛感し、より俯瞰的な視点から教育制度と現状を理解する必要性を強く感じました。とはいえ、現場では非常に多くの学びがありました。

UNICEFが長年支援している、就学前(プレプライマリー)スクールの代替となる、遠隔地における地域レベルのセンター(Community-Based School Readiness / CBSRセンター)では、ECEセッションに子どもを通わせている保護者から直接話を聞きました。ある母親は「自分の子どもの頃には小学校に入学する前に就学前教育の制度はなかったが、今は子どもがうれしそうにセンターで歌を覚えて帰ってくる」と話し、子どもの成長を実感している様子が印象的でした。こうした現場の声を直接聞くと、政府とコミュニティレベルの両方に働きかけるUNICEFの役割の大切さを改めて理解することができました。また、日本では当たり前に浸透している幼稚園や保育園などの就学前の教育が、いかに子どもの成長過程で重要な役割を果たしているのかに気付かされました。

また、地域レベルのCBSRセンターがUNICEFの支援で育成された地域ボランティアの力で持続的に運営されている点も重要な学びでした。多くのNGOでは職員が地域の活動運営に深く関わるのに対し、ここでは地域の人々が主体的に運営を担っており、UNICEFの支援によって地域の自立性と継続性の能力を強化することの重要性を実感しました。

 

②ECEエクスチェンジ・ワークショップへの参加

11月末には、UNICEFが支援する就学前教育に焦点を当てたエクスチェンジ・ワークショップにも参加しました。当初はUNICEFが参加者に指導するような研修を想像していましたが、実際は参加者同士が経験を共有し合い、学び合う意見交換型のワークショップでした。ピン(Phine)、ノン(Nong)、セポン(Sepon)各3つの郡の教師や校長が参加し、現場での取り組みや工夫を互いに共有しました。UNICEFが「いつ、生徒の成長記録ブックを教師と共有しますか」、「就学前教育では、校長先生からどのような指導がありますか」といった補助的な質問を使って議論を促し、教員たちが就学前教育から小学校へのスムーズな移行、子どもの成長記録の活用方法などを自然に説明できるよう、互いに学び合える貴重な場を作る過程を学びました。

③過去の経験を生かしたインタビュー

また、今回のインタビューでは、過去にわたしが所属していたNGOのインターンにおいて、インドで行ったマーケティング調査の経験が大きく役立ちました。当時は、必要な情報を得ることに気を取られ、初対面の相手にいきなり質問して警戒されたり、話を聞くことができずに帰らされたりなど、苦い経験もしました。しかしその経験を通して、「まず相手に安心してもらうこと」「目的を丁寧に説明すること」「順序立てて質問していくこと」の重要性を学び、インタビューは相手との信頼構築が前提で成り立つということを肌で感じたのです。今回も、実際に質問するのはラオス人の同僚でしたが、まず丁寧に、インタビュー機会に対しての感謝を伝える、そして自分の所属や目的を丁寧に説明する、というステップをお願いし、相手が安心して話せる環境づくりと信頼構築を重視しました。ごく当たり前のように見えることですが、相手への敬意なくしてインタビューは成立しないという原点を再確認したとともに、過去に自分が苦労した経験を今回の経験につなげることができたことはとてもうれしく思います。

ラオス・サバナケット県にて、就学前教育に関する教師・保護者へのインタビューの様子(2枚)

ラオスの文化に浸る その2

① タート・ルアン フェスティバル

11月には、首都ヴィエンチャンにある、ラオスを代表するシンボル、タート・ルアンという黄金の仏塔を拠点に盛大なお祭りが催されました。これは毎年11月の満月ごろに行われる、ラオス各地から僧侶が集まる大規模な伝統的仏教行事です。タート・ルアン周辺は屋台がひしめき合い、ラオス料理特有の肉や魚とハーブのにおいが立ち込め、大音量の音楽とメガホンで客を呼び込む声が四方八方から聞こえてきます。 会場にはタート・ルアンの歩んできた歴史を紹介する写真展示があり、西暦236年に最初の仏塔が建てられたとされるタート・ルアンが、その後のラオス史の中で何度も重要な転機を経験してきたことがわかりました。それによれば、16世紀に首都がルアンパバーンからヴィエンチャンへ遷されると、国家の象徴として現在みられる大規模な黄金の仏塔が再建されました。しかし、18〜19世紀には周辺国との戦争や、とくにシャム軍による侵攻によって深刻な破壊を受け、長く廃墟に近い状態だったそうです。のちの20世紀初期のフランス植民地期に大規模な修復が進められ、現在目にする姿が再び整えられました。こうした歴史を知ると、タート・ルアンが単なる仏塔としてだけでなく、ラオスの歴史を映し出すような象徴的な存在であることを改めて実感し、ラオスのこれまでの歩みを見守ってきたタート・ルアンに今の私たちも見守られているのだなと感じて感慨深かったです。

黄金に輝くタート・ルアン

② ラオス建国記念日

12月2日、ラオスは建国50周年(1975–2025)を迎えました。朝には記念パレードが行われ、夜にはタート・ルアン広場にて盛大な花火とドローンショーが実施され、ラオスの歴史の節目を象徴する一日を感じることができました。ラオスで生活していると、温和な国民性や仏教に根ざした穏やかな時間の流れが日常に深く浸透していることを実感しますが、その一方で、フランスによる植民地統治、独立後の王国政府とラオス自由戦線(ラオス愛国戦線)による内戦、そしてベトナム戦争を背景とした米国と北ベトナムの代理戦争という複雑な歴史的過程を経て、王政から社会主義国家へと体制転換してたという歴史的背景があります。ラオスは世界史において注目されることは比較的少ないかもしれませんが、周辺諸国や植民地化など、各国から多面的に影響を受けてきた地域で、その経験は現在の国家形成や社会経済的な課題にも大きく影響を及ぼしていると再認識させられます。こうした歴史的背景を踏まえると、いまラオスが直面する課題は決して「ラオス国内の問題」にとどまるものではなく、地域的・国際的文脈の中で、どのように必要な支援と協力で発展を支えていくべきかを改めて問い直させられる契機になりました。

2か月を経て感じたこと

これまで、学生の自分に貢献できることがなにか分からず悩んだり、上司の期待する役割をつかめず迷ったりしてしまうこともありました。

しかし、過去の国連ユースボランティア参加者や上司に悩みを相談するなかで、自分が受け身で仕事に向き合っていたことに気付きました。自分にできることは何か迷ってしまうのを、ラオ語が話せない、現場をまだ理解しきれていない、など、できない理由付けをしてしまったと思いました。

まだ自分が教育セクション内でそれぞれの職員が具体的に担当している業務を把握していないことに気付き、全員に個別に連絡を取ったうえでそれぞれ20分程度の時間をさいてもらい、具体的な業務を教えていただいたうえで私が手伝える部分を相談しました。自分が貢献したい気持ちを伝え、業務をより理解したいことを真剣に伝えると、他の業務があるのにも関わらずとても丁寧に対応してくださり、私が貢献できる業務も増えていきました。特にUNICEFラオス事務所の教育セクションでは、ラオ語が話せない・ラオスの教育コンテクストに精通していないとできる業務が限られてしまうのは事実ですが、改めて、だからこそ自分になにができるのかを常に自分で考え、提案していく前のめりな姿勢が残りの期間でとても重要になってくるのだとわかりました。

うまくいかない・できないと感じるときはいつも成長する機会だと思います。今後も成長の過程を楽しみながら自分にできる貢献を積み上げていきたいです。

UNICEFスタッフの親睦を深めるスタッフリトリートにて。互いの感謝を伝え合うアクティビティの様子

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